<ローマに至る道>その2)青春満喫。

チューリッヒはダダを生み出した土地であり、アーティスト、そしてその愛好家にとって素晴らしい場所だった。毎日その刺激的な空気を吸い、青春満喫状態だった。

学校に通いながら、ヨセフ・ミュラー・ブロックマン氏(スイスを代表するグラフィックデザイナー)と奥様の吉川静子さん(スイスコンクレートアートを代表するアーティスト)のアトリエでインターンをさせていただいた。

夜な夜なチューリッヒのジャズクラブ巡り、小劇場巡りをしている私に、あるとき吉川さんから、ちょっと遊び過ぎじゃないの、とお小言を頂戴した。

でも誰よりも新しいものを見たい、体験したい私はその忠告に耳を貸さなかった。傲慢にもヨーロッパの中心のトレンドを掴んでいる実感と感覚を持っていたからだ。

ブロックマンさんはというと、いつも慈悲の眼差しで、ニコニコと私の拙い話に耳を傾けてくれた。いいねいいねと。ある時、才能のない私はこれからどうやって行けばよいのでしょうとの問いかけた。「他の人と同じことをしててはだめだね。悩んでいる時間はあなたにはないね。努力努力。才能なんて後から付いてきます。」と。

ご夫妻のギャラリーが毎年出品していた世界最大規模アート・バーゼルでのインターンシップ、この経験も忘れられない。今では日本から沢山のギャラリーが参加しているが、その時はたった2件だった。

世界中から選ばれたギャラリーが一堂に介し、現代美術の力を肌で感じるきっかけとなる。良いものを自分の目で見定める 原体験であった。

後日、シアター/アートプロデューサーとして仕事を始めた時、ご夫妻にご挨拶にあがった。その時、ブロックマン氏はあなたは地球上の仕事を始めたんだね。嬉しいね。と仰った。

あ~あ、変なことはもう出来ない。社会に貢献できることをし続けなければと心に誓った。

この事が今のシルクロード企画に繋がってくるのである。

こうして、チューリッヒでの3年間は過ぎていった。

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